【さぽている育成日記】????

彼女が援護のための詩魔法を紡ぎだした。
防御と回復を同時に行うと言う優れた魔法と言う事だ。

一応、試聴と言う事で彼女が謳ってくれた。
うん、中々に素晴らしい詩だと思う。
相変わらず、どうやって伴奏が流れたりコーラスが流れたりするのかわからないが。
と思っていたら、突然男声のコーラスが加わった。
え?ちょ……今の何?
と言う疑問を彼女に投げかけても、彼女はただただ黙々と謳うのみ。
ちょっと、本当に今のって何?

【さぽている育成日記】武神装甲見参!?

彼女と共に天覇の任務をこなして、はや幾月か経った。
詩魔法で支援してくれるとは言え、自らが標的になって戦闘の重荷になっていることに責任を感じているようだ。
「だから父上、父上の負担にならないように靜は頑張ってみせるよ」
そういって、部屋に篭って決意を新たにする彼女。
そうして数時間後、新たに服を紡ぎ出したのだったのだが……。
「なんだい、その格好は……」
笑いをこらえつつ俺は彼女に尋ねる。
「えと、天使さんをイメージして作った服なんだけど……って何で笑ってるかなぁ?」
頬を膨らませて言う彼女を見やって更に笑いをこぼす。
なんだって、今の彼女の格好は、鎧をがちがちに着込んだ状態なのだから。
しかも、なんだか鎧に着られているという感じがして、それがなんだか微笑ましい。
「もう、また〜。なんでそんなに笑うかなぁ」
と膨れながらぽかぽかと俺を叩こうとするけど、彼女は動かない。
「どうしたの?」
俺は答えをわかった上でこう聞いてやる。
「よ・・・鎧が重くて動けないの……」
と、期待したとおりの回答を彼女は寄せてくれたのであった。

【さぽている育成日記】冬はつとめて

ふと俺は、思ったんだ。
彼女の着ている学校の制服。
冬服にはなっているんだが、どうしてスカートの丈は夏服のままなんだろうか?
これが最近の流行と言うのだろうか?
まったくもってわからん。
「どうしたの、父上。じぃ〜っと靜の方を見て?あ、ひょっとしていやらしい事考えていたんでしょ」
と、からかうような目つきで彼女が言ってきたので、デコピンを思いっきりくれてやった。

【さぽている育成日記】毎度恒例の

靜が新しい服を作ったとかで、そのお披露目。
「で、今回は……じゃぁ〜ん!!なんとメイド服なんだよっ!!ねぇねぇどうかなぁ?」
と相変わらずのお日様のような笑顔を浮かべたままで言ってくる。
「そ…それは……?」
こっちもこっちで相変わらずあっけに取られていると
「ん〜おかしいなぁ……。お仕事でお金持ちの人のお屋敷に行った時にメイドさん見かけると鼻の下伸ばしてたり、一緒に喫茶店に行った時に店員さんのメイド服姿を見ていると鼻の下を伸ばしてたり、この間父上のお部屋掃除して見かけたエッチな本にメイドさん姿の人がいたりしたから、もっと喜ぶと思ったんだけどな……」
と小首をひねりながら、うんうんと唸っています。
いやいや、そういうわけではなくてというか何を言っていますのやら、この娘さんは……。
というか、あの本は見つからないように念入りに隠したはずなんだが……、どうやって見つけたのだろうか?
「えとね、乙女の感。あと、エッチな本は焼却処分にしちゃいましたぁ〜(はぁと)」
と観音様のような微笑みでおっしゃられています。
嗚呼、その笑みが怖い。
そしてますます父親の威厳が……orz

【さぽている育成日記】新たなる詩を紡ぐ

彼女が立て続けに、詩を紡いだ。
一つは、子守唄
望まぬ力を持った少女とその少女を護る少年との悲しいお話。

今ひとつは……。
読経?……いや祝詞か?
魔を封じる宿命を背負った巫女が岩戸の前で魔を封じる為に舞い踊るお話。


一つ目の詩は実にいい詩だと思う。
少女の悲しいまでの宿命とその少女を護るために己の命をかけた少年の決意がありありと目の前で連想させられるというか。
何よりも、全てヒュムノスで謳われてるというのが素晴らしい。


で、二つ目は、どっからど浮きいても読経……いや、これは言い方が悪いか。
祝詞をあげてるとしか言いようが無いのだけど……。
「こういう神楽っぽい曲って、父上好きなんでしょ?巫女さんが好きなぐらいだし」
好きと言えば好きだけど、巫女好きと神楽好きは関係ないと思うのだが……?

【さぽている育成日記】娘に弄ばれる

ある日の事。
夜の食事の準備中での事。
久々に肉じゃがでも作ろうと思い、ジャガイモの皮を包丁で丁寧にむいていたとき
「父上ぇ〜、見て見て、新しい服つくったよぉ〜っ!!」
と大はしゃぎで物凄く喜んでいる声をあげつつこちらに駆け寄ってくる。
やれやれと思い苦笑しつつ彼女の方を振り向く。
彼女の姿を目にした途端、我が目を疑った。
ジャガイモが手から落ちた。
包丁が手から落ちた。
そして時が止まった。
…………
………
……

「えへへぇ、スプラッシュといって、今はやりの水着なんだよぉ〜……って、父上聞いてるのかな?」
はにかみながら上目遣いで俺を見やる彼女の姿格好は、生まれたままの姿に申し訳程度の布をつけた格好という実にいやらしい……いやいや、実にケシカラン格好をしてました。
「ねぇねぇ、どうかなぁ?」
腕に抱きついて聞いてきたところで、我に返り
「いや、どうもなにも……」
胡乱げに目を彷徨いさせつつ、咳払いを一つ。
「とにかく、女の子がむやみに肌を晒しちゃいけません」といって羽織っていた羽織を彼女の肩にかけてやった。
「むぅ〜、何で感想言ってくれないかなぁ〜」
彼女は不満げに頬を膨らませる。
「いや、似合ってるとは思うが、その格好は頂けない。その、なんだ……。インストールポイントも、晒してるし……」
「ん〜……。父上にだけなら見せてもいいんだけど」
頬を赤らめさせながら俺を見つめながら彼女がそういうので、俺は照れ隠しに視線を逸らしつつ
「それでも、ダメだ。女の子なら恥じらいを覚えてくれ」
といってやるのが、精一杯だった。
そんな、俺の姿を見て忍び笑いを溢しつつ
「ちぇっ、残念」
そんな台詞を残して彼女は、自分の部屋へと戻っていった。
一体何が残念なんだ……。


その数日後。
食事後の皿洗いをやっていた時の事。
「父上ぇ〜、見て見て、新しい服つくったよぉ〜っ!!」
と大はしゃぎで物凄く喜んでいる声をあげつつこちらに駆け寄ってくる。
やれやれと思い苦笑しつつ彼女の方を振り向く。
彼女の姿を目にした途端、我が目を疑った。
皿洗いが手から落ちた。
皿が手から落ちた。
そして時が止まった。
…………
………
……

「えへへぇ、バブルパッションといって……って、父上聞いてるのかな?」
はにかみながら上目遣いで俺を見やる彼女の姿格好は、風呂上りにバスタオルを巻いただけという実にいやらしい……いやいや、実にケシカラン格好をしてました。
「ねぇねぇ、どうかなぁ?」
腕に抱きついて聞いてきた。
その笑顔はどう見ても、俺をからかって遊んでるようにしか見えません。
ひょっとして、俺遊ばれてますか?

【さぽている育成日記】繋ぎあう手と手の中一つの同じその願い

「え〜とね、父上にとぉ〜っておきの詩を聞かせてあげるね」
にぱりんと音がしそうなほどの笑顔をきめながら、彼女がそう言ったのはついさっきの事。
聡い彼女の事だ。おそらく、最近のオレの悩みを敏感に感じ取ったのだろう。
仕事とはいえ、彼女から心から楽しく謳う事を奪っているのだから……。
その事に、罪悪感を感じていると言う事に……。
陰鬱に沈みかけた心に、彼女の詩声が響く。

それは、世界再生の詩。
空に大地に世界に願いをかけ、生命に希望を与える詩。
この世の全て生きとし生けるもののが助け合い共存しあう。
そこには、人もレーヴァテイルも関係ない。
ただそばにいるだけで、隣にいるだけで幸せになれる。
そういう願いを込めた詩。

どこか懐かしく優しい風がオレの心に吹いた。
さっきまでの陰鬱な思いなど、吹き飛んでしまったようだ。
かわりに、一筋の涙が頬を伝っていた。

気が付くと、オレは彼女の胸の中に頭を抱きしめられていた。
端的に言えば、彼女の胸の上で泣いているかのようだった。
彼女は、まるで幼子をあやすかのようにオレの頭を撫でていた。
一撫で事に、オレの心を溶かしていくかのように感じた。
「うん、靜は、いつまでも、ずっと、父上と共にいるよ」
何か、気恥ずかしい気がしたが、オレはなすがままにオレが泣き止むまで、彼女の気が済むまで
その場にその体勢でいつづけたのであった。